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眼科– ophthalmology –

流涙症(涙やけ)

図1 流涙症(治療前)
図1 流涙症(治療前)
図2 流涙症(治療1ヶ月)
図2 流涙症(治療1ヶ月)
図3 猫の流涙(ウィルス性結膜炎)
図3 猫の流涙(ウィルス性結膜炎)

流涙症とは、涙が眼表面から瞼の外側に溢れ出てしまう状態をいいます。
溢れ出た涙は被毛を変色させ、赤茶色~黒色の跡がついてしまい、涙やけに
なります。

原因は、
(1)涙点の先天的な欠損や小涙点
(2)涙の排水溝である鼻涙管のつまり(眼瞼炎や涙嚢炎などの炎症による)
(3)若齢による排水機構の未発達
(4)涙の構成成分の変化
などが言われています。

治療には、健全な涙の産生・分布・排出を促す治療を1~2か月間継続する
方法が第一選択です。

当院では、涙の排水溝である鼻涙管の洗浄を行うことでつまりを取り除き、
炎症に対する内服薬を処方しています。眼瞼のマッサージやホットパックも
平行して行うこともお勧めしています。

ただし、若齢の子犬の場合は、成長に伴って症状が緩和されることが多い
ため、年齢や症状の重さによって方針が異なります。重症の場合には外科手術をお勧めすることもあります。

猫でも同様の症状が起こることがありますが、犬とは異なり、ほとんどが
感染症による結膜炎が原因と考えるべきです。ウィルス性結膜炎やクラミジア感染症などとの鑑別が必要です。

角膜潰瘍

角膜潰瘍は、角膜表面に欠損が生じた状態をいいます。
犬の眼の疾患では最も多く見られる疾患です。
症状は、頻回の瞬きや流涙、結膜充血、角膜の白濁など、ご自宅でも見て気が付きやすいものが多いです。
角膜潰瘍は潰瘍の深さにより分類されます。

表層性角膜潰瘍

角膜上皮のみが欠損した状態をいいます。睫毛や眼瞼の異常により角膜が障害されることにより浅い傷が
生じます。

治療は角膜保護剤の点眼薬を頻回に投与します。

睫毛や眼瞼の異常が原因となっている場合は、原因の除去を行います。原因を除去し適切に治療すれば、
経過は良好です。

難治性角膜潰瘍

図4 剥離した角膜上皮
図4 剥離した角膜上皮
図5 角膜格子状切開術
図5 角膜格子状切開術

角膜上皮のみの欠損であっても、角膜実質(上皮の内側の層)との接着不全が生じ、治癒過程に異常が生じることにより起こります。

中年期で、角膜上皮の浅い潰瘍が治療により改善しない場合は、この疾患を疑います。診断には、スリットランプ検査により剥離した上皮を確認する必要があります。

治療は、角膜保護剤の点眼薬を頻回投与し、場合により角膜上皮除去術および角膜格子状切開術を行います。

点眼薬のみで完治することは少なく、浅い傷だと甘くみてしまうと治療が
数週間から数ヶ月もかかってしまうこともあります。

デスメ膜瘤・角膜穿孔

図6 デスメ膜瘤
図6 デスメ膜瘤

角膜の一番深層にあるデスメ膜にまで傷害が及んだ状態をデスメ膜瘤といいます。デスメ膜が破れると、角膜穿孔に至ります。
治療には緊急の外科手術を必要とする場合も多く、視覚を温存することが一番の治療目的になります。

当院では、自己血清点眼の頻回投与、瞬膜フラップ術、角膜人工膜フラップ術などの治療を組み合わせて行います。

角膜黒色壊死症

図7 角膜黒色壊死症
図7 角膜黒色壊死症

猫の角膜の中央に黒色の壊死物が形成される病気です。黒色の壊死組織は、次第に正常角膜と遊離して脱落します。脱落する際に潰瘍になり、状況によっては角膜穿孔に至ります。

角膜黒色壊死症の原因はまだ解明されていませんが、角膜刺激・感染症・全身性代謝疾患などが基礎にあるといわれています。また、環境変化(同居猫が増えた、引っ越しなど)によるストレスで免疫力が低下することで病状が悪化するとされています。

治療には、角膜保護剤の点眼、インターフェロン点眼、ウィルスの増殖を阻害するL-リジンの内服を行います。当院では、ヘルペスウィルス感染が基礎疾患に認められる場合には、抗ウィルス薬の内服投与を行うこともあります。

緑内障

定義

緑内障とは、「視神経または網膜神経節細胞の障害を引き起こす疾患群」とされています。

少し難しい定義ですが、犬猫においては、眼圧の上昇が視神経障害を引き起こす重要な危険因子になるとされています。また、一度失われた視覚は回復することはありませんので、早期発見と早期治療が必要不可欠です。

分類

図8 ぶどう膜炎の続発性緑内障
図8 ぶどう膜炎の続発性緑内障
図9 眼内腫瘍の続発性緑内障
図9 眼内腫瘍の続発性緑内障

[ 先天性緑内障 ]

生まれつき隅角が形成されない異常によるものです。犬では稀です。

[ 原発性緑内障 ]

隅角の形態により、開放隅角と閉塞隅角にわけられます。犬の原発緑内障の大半は隅角が狭いあるいは閉塞していることによる眼房水流出障害が生じる閉塞隅角によるものです。

好発年齢は中年齢(約6~8歳齢)です。好発犬種として、柴犬、
アメリカン・コッカー・スパニエル、ゴールデンレトリーバー、
シー・ズー、ダックスフンド、ビーグルなどが挙げられます。

[ 続発性緑内障 ]

眼圧の上昇を引き起こすような他の疾患に引き続き起こる緑内障を指します。原因となる疾患は、ぶどう膜炎や白内障、水晶体脱臼、眼内腫瘍、網膜剥離などが挙げられます。

診断

緑内障の診断には、眼圧測定、隅角鏡検査、眼底検査を行います。動物の場合、眼圧の上昇と視神経乳頭の
障害が認められた場合に緑内障と診断します。眼圧は、動物用TONOVETを用いて測定します。

緑内障の原因による分類を行うために、隅角鏡検査が必要になります。ただし、多くの緑内障では角膜浮腫により白濁しているため、眼球内の検査は困難です。視神経乳頭の障害を確認するために、眼底検査を行います。

治療

現在のところ、緑内障に対して唯一の治療法は、早急に眼圧を下げることです。

高眼圧が24~72時間持続することで視神経は不可逆的な傷害を受けて視覚が失われてしまうため、
速やかな対応が必要となります。

[ 点眼薬 ]

眼圧を降下させる内科的治療で最も重要なものです。点眼薬には、房水産生を抑制するタイプ(炭酸脱水素酵素阻害剤・βブロッカーなど)と、房水流出を促進するタイプ(プロスタグランジン製剤・α1ブロッカー・副交感神経刺激薬など)に大きく分類されます。特にプロスタグランジン製剤は、犬の緑内障に対する緊急治療薬として有用で、点眼後30分程度で眼圧降下作用がみられます。

点眼治療により、眼圧が降下して視覚が維持できた患者さまに対しては、点眼薬の種類や点眼回数を調整しながら治療していきます。眼圧が安定しない患者さまには、次の外科的治療をご提案することがあります。

[ 外科的治療 ]

房水流出を促進させる外科的治療として、前房シャント術が広く行われています。房水を排泄する細い管を
設置するインプラント術です。視覚を有している原発性緑内障の患者さまが対象で、専門医での手術になります。

房水産生を抑制する外科的治療には、毛様体冷凍凝固術や毛様体光凝固術などがあります。房水を産生する
毛様体を破壊することによって眼圧を降下させます。長期的に眼圧を降下させる可能性があります。

図10 右眼:白内障、左眼:シリコン挿入術
図10 右眼:白内障、左眼:シリコン挿入術

[ 強膜内シリコンインプラント挿入術 ]

視覚回復を望めない慢性緑内障の患者さまには、痛みを取り除き点眼の負担を軽減させるための手術をご提案します。

強膜内シリコンインプラント挿入術は、眼球の外側を残して内容物を除去し、眼球と同じサイズのシリコンボールを挿入する方法です。眼球の形を温存しますので、眼球も動きますし涙も出ます。一見して通常の眼球と区別がつかないのが最大のメリットです。デメリットは、角膜が白濁したり色素沈着することと、角膜炎やドライアイになりやすいことです。

図11 眼球摘出術 術後
図11 眼球摘出術 術後

[ 眼球摘出術 ]

視覚回復が望めず、眼球の腫瘍や重度の炎症が原因で緑内障となった患者さまが適応となります。眼瞼から眼球全てを摘出しますので、術後合併症の心配もほとんど必要ありません。眼球を残すべきではない状況においてはお勧めする場合があります。