ブログ- blog -
2018/04/14ウサギさんの去勢手術
こんにちは。
獣医師の細谷です。
今回のお題は「ウサギさんの去勢手術」です。
去勢手術は何故行われるのでしょうか?
一昔前では「多頭飼いでの不要な妊娠を避けるため」が第一目的でした。しかし、単頭飼いが主流の現代、「精神的ストレスの軽減」と「生殖器関連の病気予防」が目的として去勢手術が実施されています。そのメリット、デメリットを解説していきたいと思います。
≪メリット≫
l メリット① 精神的ストレスの軽減
避妊手術の時にも前述しましたが、ウサギは非常に高い繁殖能力を持っています。ゆえに交尾をしなければ、交尾欲求のストレス状態が常に続くということであり、それにより性格の不安定が生じることがあります。(もちろん未去勢のウサギさんでも落ち着きがある子もいっぱいますよ)。またマーキング行動(尿スプレー)で縄張りを主張したり、さらに縄張り意識が強くなるとオーナーに対しても攻撃的になることもあります。
去勢後は性格が穏やかになる子が多く、また尿スプレーは90%以上が消失します。精神的ストレスの軽減だけでなく、人間と一緒に暮らすコンパニオン アニマルとしても好ましい状態に近づきます。
l メリット② 生殖器関連の病気予防
発生頻度は雌ほど多くはありませんが、精巣腫瘍の予防になります。
≪デメリット≫
l デメリット① 全身麻酔
ウサギさんは麻酔に弱いと言われていますが、近年麻酔薬の性能向上により、麻酔リスクは確実に低くなっています。元気で血液検査などの検査所見に異常がないのであれば、麻酔関連の死亡のリスクは2%未満です。
l デメリット② 術後の肥満
生殖器はエネルギーを使います。その生殖器が摘出されたことにより、消費するはずだったカロリーが余り、それが脂肪になってしまうことがあります。
ラビットフード(ペレット)を多少減らす、カロリーの少ない牧草に変更する(アルファルファ ⇒ チモシー)などすれば、対処できます。
手術をすること、精巣を摘出することは確かに「自然なこと」ではありません。しかし自然であれば、周りに雌がいて、交尾をして、子孫を増やすことができます。この自然な行動ができない人間界では、「自然な行動ができないストレス」という新たなストレスが生まれてしまいます。人間家族の一員になる、ウサギをコンパニオン アニマルとして迎えるということは、そういった新たなストレスにも向き合っていかなければいけません。病気の予防ももちろん重要ですが、ウサギさんの問題行動(性格・尿スプレー・マウンティングetc.)にお悩みであれば去勢もご検討ください。
長々とここまで説明させていただきましたが、こんなことやあんなこと、他に気になるということがあれば診察時にどんどんご質問ください。オーナーさんや、ウサギさんにとっての答えは何なのか、一緒に考えていきましょう。
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。