uO

ブログ- blog -

2018/01/25Dr.細谷のうさ講座④

こんにちは。
獣医師の細谷です
今回のお題は「ウサギさんの避妊手術」です。
避妊手術は何故行われるのでしょうか?
その第一目的は「不要な妊娠を避けるため」「不要な妊娠を避けるため」です。
しかし、それ以外にも大きなメリットがあります。
それが「生殖器関連の病気予防「生殖器関連の病気予防」「精神的ストレスの軽減」「精神的ストレスの軽減」です。
この2つのメリット、またメリットだけでなく手術のデメリットも解説していきたいと思います。
【メリット①】生殖器関連の病気予防
ウサギは自然界の食物ピラミッドの下位にいます。つまり「食べられる側の動物」です。種の存続のため、ウサギは「高い繁殖能力」を身につけました。
早熟な個体は生後3ヵ月で妊娠し、また1回の妊娠で4~12頭出産(飼育ウサギはもっと少ないと言われている)、産後すぐに発情がくるため、このサイクルを1年に最大4~5回繰り返すことができます。
生殖器には発情・妊娠・出産という「サイクル」があります。自然界では妊娠や出産は日常の生理的活動であることから、自然界のウサギはこの生殖器のサイクルが正常に機能していきます。しかし、妊娠・出産をほとんど、もしくは全くしない人間界のウサギでは、このサイクルが「発情」でストップしてしまい、言い換えれば生殖器にずっとエンジンがかかっている状態になっています。生殖器が常に活発な状態だと、ホルモンの影響により子宮や乳腺が疾患になる可能性が高まります。特に未避妊のウサギの子宮疾患発生率は高く、70%の個体が何かしらの子宮疾患になると言われています。しかも、その20~30%が悪性腫瘍である子宮腺癌です。つまり未避妊ウサギの5~7頭に1頭は子宮の悪性腫瘍になる可能性があるのです。
その生殖器、卵巣・子宮を手術により摘出してしまえば疾患の予防になります。例え摘出時に既に子宮に癌があったとしても、それが早期であればそのまま完治させる可能性も十分にあります。
l  メリット② 精神的ストレスの軽減
 前述したようにウサギは高い繁殖能力を持つゆえに、妊娠・出産をしなければ、発情状態が長い間続きます。これは交尾欲求のストレス状態が非常に長く続くということであり、それにより性格の不安定が生じることがあります。(もちろん、未避妊のウサギさんでも落ち着きがある子もいっぱいます。)偽妊娠も起こすことも多々あり、普段は落ち着いていても、偽妊娠の間は性格が荒くなる子もいます。避妊手術をすればこのようなストレスからも解放することができます。
l  デメリット① 全身麻酔
ウサギさんは麻酔に弱いと言われていますが、近年麻酔薬の性能向上により、麻酔リスクは確実に低くなっています。統計上(これは疾患の有無、年齢、本人の状態などを無視したもの)ウサギの麻酔リスクは2~3%だと言われています。術前に血液検査とレントゲン検査を実施し、可能な限りの麻酔リスクの把握に努めることで、そのリスクを下げるために必要な処置を検討・実施すれば更にそのリスクを下げることができると考えています。
l  デメリット② 術後の肥満
 生殖器はエネルギーを使います。その生殖器が摘出されたことにより、消費するはずだったカロリーが余り、それが脂肪になってしまうことがあります。
 ラビットフード(ペレット)を多少減らす、カロリーの少ない牧草に変更する(アルファルファ ⇒ チモシー)などすれば、対処できます。
手術をすること、卵巣・子宮を摘出することは確かに「自然なこと」ではありません。しかしながら、人間家族の一員になる、人間界の一員になるということはその時点で自然な状態ではないはずです。
妊娠・出産を経ていくと、生殖器疾患の発生率は低くなります。妊娠・出産をしない故に生殖器疾患の発生率が高くなっていきます。妊娠・出産ができないことによる生殖器疾患の増加は、人間が飼っていることにより増加させていると言ってもいいかもしれません。
 個人的には、僕は避妊手術をした方がいいと考えています。しかし、手術をすることが必ずしも「正解」であるとは思ってはいません。オーナーとウサギさんの数だけ「答え」はあります。
「手術はした方がいいと聞くけど、どうして?」「手術した方がいいのはわかるけど、ウサギは手術で亡くなることが多いって聞きました…」このような思いがあれば、その気持ちをそのままにせず、正しい知識を持って、「手術をする決断」「手術をしない決断」をしていいただけるよう、我々がサポートします。
長々とここまで説明させていただきましたが、こんなことやあんなこと、他に気になるということがあれば診察時にどんどんご質問ください。オーナーさんや、ウサギさんにとっての答えは何なのか、一緒に考えていきましょう。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
次回のテーマは「ウサギさんの去勢手術」です。